EmDashはWordPressの代わりになるか — Cloudflareの新しいCMSを移行と保守の面から読む

結論

EmDashは、Cloudflareが公開した無料のオープンソースのCMSです。
WordPressとの一番の違いは、プラグインを一つずつ隔離した環境で動かし、プラグインが宣言した権限しか使わせない仕組みにあります。
記事・固定ページ・画像はWordPressから取り込めますが、WordPressのプラグインとテーマはそのままでは動きません。
また、PHPのレンタルサーバーでは動かず、AIでサイトを作る機能などの一部はCloudflareの基盤が前提です。
いまWordPressで困っていないサイトが急いで移る理由は薄く、新しく作るサイトや、プラグインの脆弱性への対応に追われているサイトで検討する候補です。

2026年10月30日に、Cloudflareの公式ブログの発表2本と、EmDashのGitHubリポジトリの説明書きを読み合わせて確かめた内容です。

EmDashとは

EmDashは、Webサイトを作るための仕組みであるAstroの上で動くCMSです。
Cloudflareは2026年4月1日の発表で、EmDashを「WordPressの精神的な後継」と紹介し、版番号0.1.0の開発者向けプレビューとして公開しました。
その後、2026年9月28日の発表で安定版の1.0になっています。
ライセンスはMITで、無料で使えます。

管理画面には、投稿・固定ページ・メディア・メニュー・カテゴリーやタグといった、WordPressを使ってきた人になじみのある画面がそろっています。
WordPressとの主な違いを表にまとめます。

EmDashとWordPressの主な違い
項目 EmDash WordPress
書かれている言語 TypeScript (Astroの上で動く) PHP
動かす場所 Cloudflare Workers、またはNode.jsが動くサーバー PHPが動くサーバー (一般的なレンタルサーバーを含む)
データベース Cloudflare D1、SQLite、PostgreSQL など MySQL・MariaDB
プラグインの動き方 一つずつ隔離した環境で、宣言した権限だけを使う 本体と同じ権限で動き、データベースやファイルにも触れられる
ログイン パスキーが標準 パスワードが標準
AIエージェントからの操作 MCPサーバーを標準で備える MCP Adapter などのプラグインを別に入れる
ライセンス MIT GPL

WordPressとの一番の違いはプラグインの隔離

EmDashが解こうとしているのは、プラグインから入り込む脆弱性の問題です。
Cloudflareの発表は、Patchstackの2025年の集計を引いて、WordPressサイトのセキュリティ問題の96%がプラグインに由来すると書いています。

WordPressのプラグインは、本体と同じ権限で動きます。
データベースのどの表も読み書きでき、外部のどこへでも通信できます。
一つのプラグインに穴があると、サイト全体が影響を受けるのはこのためです。

EmDashでは、プラグインごとに「どのイベントで動くか」「何をしてよいか」を設定ファイル (マニフェスト) に書きます。
たとえば「保存されたあとに動く」「コンテンツを読む」「メールを送る」と宣言したプラグインは、それ以外のことができません。
外部への通信も、宣言した送り先にしか出られません。
宣言は入れる前に読めるので、管理者は入れる時点で、そのプラグインに何を許すかを判断できます。

隔離の仕組みは、Cloudflare上ではプラグインごとに別のWorkerとして動かし、Node.jsのサーバーではCloudflareが公開しているworkerdという実行環境を別のプロセスとして立ち上げて動かします。
1.0では、プラグインを配布する仕組み (プラグインレジストリ) も公開され、作者の署名とプラグインが求める権限を、入れる前に確かめられるようになりました。

WordPressから移せるもの、移せないもの

移せるのはコンテンツです。
動きを作っているプラグインとテーマは、作り直しになります。

WordPressからEmDashへの移行で引き継げるもの
対象 引き継ぎ 方法
投稿・固定ページ できる WordPressの書き出しファイル (WXR) を読み込むか、EmDash Exporter プラグインを入れて取り込む
画像などのメディア できる 取り込みのときにEmDashのメディアライブラリへ移される
カスタム投稿タイプ できる EmDashの「コレクション」に置き換えて取り込む
プラグイン そのままでは動かない EmDashの形式で作り直す。移植を手伝うAI向けの手順書 (Agent Skills) が用意されている
テーマ そのままでは動かない Astroで作り直す。こちらも移植用の手順書がある

EmDash Exporter プラグインを使う取り込みは、WordPressのアプリケーションパスワードで守られた、自分だけが使える窓口を通ります。
問い合わせフォーム、会員機能、ネットショップなどをプラグインで作っているサイトは、その機能ごとに作り直しの手間がかかります。
プラグインの数が多いサイトほど、移行の費用はコンテンツの量ではなくプラグインの数で決まります。

どこで動かすかと、Cloudflareへの依存

EmDashは、Cloudflare上でも、Node.jsが動く自前のサーバーでも動きます。
GitHubの説明書きには、Cloudflare上ではデータベースにD1、ファイルの保存にR2を使い、それ以外ではSQLite・PostgreSQL、S3互換のストレージやサーバー上のファイルも使えると書かれています。

注意したいのは次の二点です。

PHPのレンタルサーバーでは動かない

EmDashはPHPではなくNode.jsやCloudflare Workersで動きます。
WordPressを置いている一般的なレンタルサーバーに、そのまま載せ替えることはできません。
Cloudflareで動かすか、Node.jsを常時動かせるサーバーやコンテナを用意する必要があります。

1.0の機能の一部はCloudflareが前提

1.0で加わった機能のうち、AIでサイトを作るEmDash Build、PostgreSQLへの接続を速くする仕組み、Cloudflareのキャッシュとの連携は、Cloudflareの基盤の上で使う前提です。
CMSとしての本体はどこでも動きますが、新しい機能を一通り使おうとすると、Cloudflareに寄っていくことになります。

移行を考えてよいサイト、待つ方がよいサイト

EmDashへの移行の向き不向き
サイトの状況 判断 理由
これから新しく作る、記事中心のサイト 候補に入れてよい 移す資産がなく、プラグインの作り直しも発生しない
プラグインが少なく、開発者が社内か委託先にいる 検証環境で試してよい コンテンツは取り込めるので、作り直しの範囲が小さい
プラグインの脆弱性対応に毎月追われている 比較の候補になる 隔離の仕組みが、この負担を減らすために作られている
ネットショップ・会員機能などをプラグインで作っている 待つ方がよい 機能ごとの作り直しが必要で、置き換え先のプラグインもまだ少ない
レンタルサーバーの管理画面だけで運用している 待つ方がよい 動かす場所から用意し直す必要がある

WordPressの弱点はプラグインの扱いにありますが、その弱点は、入れるプラグインを絞り、更新を止めずに続けることでも小さくできます。
CMSを替えるかどうかは、移行にかかる費用と、いまの運用で減らせる危険の大きさを比べて決めるのが順当です。

AI検索から見ると、CMSの違いは決め手にならない

ChatGPTやGoogleのAIによる概要などに自社のページが引用されるかどうかは、CMSの種類では決まりません。
見られるのは、ページのHTMLに本文がそのまま入っているか、問いへの答えがはっきり書かれているか、AIの検索用のクローラーを拒否していないか、といった点です。
これらはWordPressでもEmDashでも整えられます。

EmDashで新しく加わるのは、AIエージェントからサイトを操作する入口が標準で付いてくることです。
管理画面でできることは、MCPサーバー・CLI・APIからもできます。
便利な反面、エージェントにどの利用者の権限でつながせるかを決めておかないと、記事の公開や削除までエージェントができてしまいます。
この点はWordPress 7.0でMCP Adapterを入れたときと同じです。

当社の運用保守での扱い

NeovisionのWordPress運用保守 (単一サイトの Core は月60,000円・税別) では、コアとプラグインの更新、監視、バックアップに加えて、入っているプラグインの見直しも行います。
使っていないプラグインを外し、残すものを絞ることは、CMSを替えなくてもできる対策です。

料金は、Core が月60,000円、マーケティング部署の技術パートナーとして実装のレビューや検証環境での公開前チェックまで含む Partner が月200,000円、複数サイトをまとめて見る Multi が月300,000円です (いずれも税別)。
契約は1か月単位で、最低契約期間はありません。
内容の違いはWordPress運用保守のサービス紹介と料金ページにまとめています。

EmDashへの移行を考えているが、いまのサイトのプラグインのうち何を作り直すことになるのか分からない、という段階からでも相談できます。
お問い合わせフォームから、サイトのURLを添えてご連絡ください。

よくある質問

EmDashは無料で使えますか?

EmDash自体はMITライセンスのオープンソースで、無料です。
かかるのは動かす場所の費用です。
Cloudflareで動かす場合はCloudflareの料金体系に、自前のサーバーで動かす場合はそのサーバーの費用に従います。

WordPressのプラグインはEmDashで使えますか?

そのままでは使えません。
EmDashのプラグインはTypeScriptで書き、マニフェストで権限を宣言する形式です。
WordPressのプラグインを移植するためのAI向けの手順書は用意されていますが、作り直しであることに変わりはありません。

Cloudflareを使わずに動かせますか?

動かせます。
Node.jsが動くサーバーで、SQLiteやPostgreSQLを使って動かせると説明されています。
プラグインの隔離も、workerdを別のプロセスとして立ち上げる形で働きます。
ただし、AIでサイトを作るEmDash Buildなど、1.0の機能の一部はCloudflareの基盤が前提です。

EmDashに移るとセキュリティの心配はなくなりますか?

プラグインが宣言した権限の外に出られない仕組みは、WordPressのプラグインに多い被害の広がり方を抑えます。
ただし、宣言された権限の中で起きる不具合や、管理者のアカウントの扱い、サーバー側の設定は、これまでどおり運用で守る必要があります。

この記事の執筆・運営

株式会社Neo Vision (ブランド名: Neovision / 東京都中央区銀座) が運営しています。
本記事は、Cloudflareが公式ブログで公開したEmDashの発表と、EmDashのGitHubリポジトリの説明書きに基づいています。
数値の書き方と、誤りが判明したときの直し方は訂正ポリシーに定めています。

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